【2025年度2Q】5803 フジクラ

決算速報

エグゼクティブサマリー

2025年度第2四半期(上期)決算は、売上高・各段階利益が前年同期を大幅に上回り、上期実績として過去最高を更新しました。この好調な業績は、主に情報通信事業における生成AIの普及を背景としたデータセンタ向け需要の力強い伸長が牽引したものです。

一方で、事業セグメント間の業績には差異が見られ、エレクトロニクス事業と自動車事業はサプライチェーンの問題やコスト増により減収減益となりました。エネルギー事業は高採算製品の販売が寄与し増収増益を確保しています。

この好調な上期実績と下期の力強い見通しを踏まえ、2025年度通期連結業績予想は大幅に上方修正されました。修正後の予想では、売上高は1兆1,090億円、親会社株主に帰属する当期純利益は1,320億円を見込んでおり、売上高、営業利益、経常利益、当期純利益の全てで過去最高を更新する見通しです。

株主還元についても、業績予想の上方修正に伴い、年間配当予想を前回予想から40円増配し、1株当たり190.0円(中間95.0円、期末95.0円)に修正。好調な業績とキャッシュ・フロー見通しを背景に、2025年度の配当性向は40%に引き上げられます。

1. 2025年度上期(第2四半期累計)決算概要

1.1. 連結経営成績

2025年度上期(2025年4月1日~9月30日)の連結経営成績は、前年同期比で大幅な増収増益となり、2025年8月7日に公表された前回予想値も上回りました。

項目2024年度上期実績2025年度上期実績前年同期比
売上高4,475億円5,590億円+24.9%
営業利益551億円902億円+63.5%
経常利益522億円917億円+75.7%
親会社株主に帰属する当期純利益287億円671億円+133.7%
1株当たり当期純利益104.21円243.35円+139.14円

(注) 決算短信の百万円単位の数値を億円単位に換算。売上高は2025年3月期中間期 447,539百万円、2026年3月期中間期 558,994百万円。

1.2. 業績の主要因

業績を牽引したのは、生成AIの普及・拡大を背景としたデータセンタ向け需要が想定を上回る形で伸長した情報通信事業であり、同事業は前年同期比で営業利益が2.2倍となる大幅な増益を達成しました。

一方で、他の事業では課題も見られました。

  • エレクトロニクス事業: 川下におけるサプライチェーン問題の発現、バーツ高によるコスト増、新モデル製品の生産性改善の遅れ、競争激化が重なり減収減益となりました。
  • 自動車事業: 黒字基調は維持したものの、受注プログラムが端境期に入ったことによる納入数量の減少や材料費高騰の影響を受け、減収減益となりました。
  • エネルギー事業: 高採算製品の出荷増加や売価改善により増収増益を確保しました。

1.3. 業績増減分析(前年同期比)

売上高の増減要因(前年同期比 +1,115億円) 為替や銅価のマイナス影響があったものの、実力値ベースで1,299億円の増加となりました。この増加分のうち、情報通信事業が1,316億円を占めており、同事業の成長が全体の増収を牽引したことが明確に示されています。

要因増減額
実力値+1,299億円
(内訳) 情報通信+1,316億円
(内訳) エレクトロニクス+10億円
(内訳) 自動車▲42億円
(内訳) エネルギー+15億円
為替影響
銅価の影響
合計+1,115億円

営業利益の増減要因(前年同期比 +350億円) 市場環境要因(為替、銅価)が66億円のマイナス影響を与えたものの、実力要因が416億円のプラスとなり、大幅な増益を達成しました。実力要因の内訳を見ると、情報通信事業が455億円の利益増を創出しており、エレクトロニクス事業(▲40億円)や自動車事業(▲13億円)の落ち込みを補って余りある貢献を果たしています。

要因増減額
市場環境要因▲66億円
実力要因+416億円
(内訳) 情報通信+455億円
(内訳) エレクトロニクス▲40億円
(内訳) 自動車▲13億円
(内訳) エネルギー+12億円
合計+350億円

2. セグメント別業績

2025年度上期のセグメント別業績は以下の通りです。

セグメント売上高 (億円)前年同期比営業利益 (億円)前年同期比
情報通信3,035+63.4%738+117.5%
エレクトロニクス862-2.4%49-55.5%
自動車862-6.2%23-38.0%
エネルギー732+2.2%75+52.0%
不動産56+2.8%25-3.9%
合計5,590+24.9%902+63.5%
  • 情報通信事業部門: 生成AIの普及と拡大を背景に、データセンタ向けの需要が引き続き力強く伸長し、大幅な増収増益を達成しました。
  • エレクトロニクス事業部門: 年度当初からの懸念であった川下サプライチェーン問題が顕在化。加えて、バーツ高によるコスト増、新モデル製品の生産性改善の遅れ、競争激化が影響し、減収減益となりました。
  • 自動車事業部門: 引き続き黒字基調を維持しましたが、受注プログラムが端境期を迎えたことによる納入数量の減少と、材料費の高騰が響き、減収減益となりました。
  • エネルギー事業部門: 高採算製品の出荷増加と売価改善が奏功し、増収増益を確保しました。
  • 不動産事業部門: 旧深川工場跡地の再開発事業「深川ギャザリア」からの賃貸収入等により、引き続き堅調に推移しました。

3. 財政状態

2025年9月末の総資産は8,546億円となり、2025年3月末比で242億円増加しました。これは主に、情報通信事業の需要増を背景とした売上債権および棚卸資産の増加、ならびに有形固定資産の増加によるものです。

負債は、長期借入金の返済等により352億円減少し3,597億円となりました。純資産は、親会社株主に帰属する中間純利益の計上により595億円増加し4,948億円となりました。

これらの結果、自己資本比率は5.4ポイント改善し、54.5%となりました。

主要項目2025年3月末2025年9月末増減
総資産8,303億円8,546億円+242億円
負債合計3,950億円3,597億円▲352億円
純資産合計4,353億円4,948億円+595億円
有利子負債1,471億円1,384億円▲87億円
自己資本比率49.1%54.5%+5.4 pt
NET Cash379億円155億円▲223億円

4. 2025年度通期業績予想

4.1. 業績予想の上方修正

情報通信事業におけるデータセンタ向け需要が下期も前回公表値を大幅に上回る見込みであることから、2025年度の通期連結業績予想が上方修正されました。

これにより、売上高・各段階利益は過去最高を更新する見込みです。売上高、営業利益は2期連続、経常利益は4期連続、当期純利益は5期連続での記録更新となります。

4.2. 修正後業績予想

項目2024年度実績2025年度 修正後予想前年比
売上高9,794億円11,090億円+13.2%
営業利益1,355億円1,790億円+32.1%
経常利益1,372億円1,840億円+34.1%
親会社株主に帰属する当期純利益911億円1,320億円+44.9%
1株当たり当期純利益330.32円478.40円+148.08円
為替レート (USD/JPY)152.62円145.52円 (下期適用: 145.00円)
銅ベース (千円/トン)1,4781,410 (下期適用: 1,350)

4.3. セグメント別通期業績予想

セグメント売上高予想 (億円)営業利益予想 (億円)
情報通信6,0541,477
エレクトロニクス1,686113
自動車1,67949
エネルギー1,463125
不動産11049
合計11,0901,790

5. 株主還元

通期連結業績予想の上方修正を踏まえ、株主還元方針も修正されました。

  • 配当予想の増額: 2025年度の年間配当予想は、前回予想の1株当たり150.0円から40.0円増配し、190.0円/株(中間配当95.0円、期末配当95.0円)に修正されました。なお、中間配当は2025年11月7日の取締役会で決議済みです。
    • 2024年度年間配当実績: 100.0円/株
  • 配当性向の引き上げ: 2023~2025年度の中期基本方針では配当性向30%が目標とされていましたが、2024年度実績が中期目標を上回り、3か年累計のキャッシュ・フローも計画を大きく上回る見通しであることから、2025年度は配当性向を40%とすることが決定されました。
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