エグゼクティブサマリー
2026年3月期第2四半期において、丸紅株式会社は親会社の所有者に帰属する中間利益が前年同期比28.3%増の3,055億円と大幅な増益を達成しました。この増益は主に、金融・リース・不動産セグメントにおける第一生命ホールディングスとの国内不動産事業統合に伴う評価益(税後765億円)という一過性の要因によるものです。
一方で、本業の収益力を示す営業利益は、商品市況の下落や販売費及び一般管理費の増加が影響し、前年同期比12.9%減の1,264億円となりました。特に金属事業やエネルギー・化学品事業が減益となる中、食料・アグリ事業は堅調な増益を確保しました。
通期の連結業績予想(親会社の所有者に帰属する当期利益5,100億円)は据え置かれており、中間期時点での進捗率は59.9%と好調に推移しています。財政状態は、純利益の積み上げにより自己資本が充実し、ネットDEレシオは0.53倍と健全な水準を維持しています。
1. 連結経営成績の概況
当中間期の連結経営成績は、収益が増加したものの、売上総利益および営業利益は減少しました。しかし、大規模な一過性利益の計上により、税引前利益および最終利益は大幅な増益を記録しました。
| 項目 | 2026年3月期中間期 | 2025年3月期中間期 | 増減率 |
| 収益 | 4兆2,034億円 | 3兆8,912億円 | +8.0% |
| 営業利益 | 1,264億円 | 1,451億円 | △12.9% |
| 税引前利益 | 3,655億円 | 2,950億円 | +23.9% |
| 親会社の所有者に帰属する中間利益 | 3,055億円 | 2,381億円 | +28.3% |
| 基本的1株当たり中間利益 | 185.18円 | 143.11円 | – |
収益・利益の分析
- 収益: 前年同期比3,122億円(8.0%)増の4兆2,034億円。主に金属セグメント、食料・アグリセグメントでの増収が寄与しました。
- 売上総利益: 前年同期比92億円(1.6%)減の5,574億円。主なセグメント別の増減は以下の通りです。
- 減益要因:
- 金属: 商品価格下落に伴う豪州原料炭事業の減益(△88億円)。
- エネルギー・化学品: 石油化学品取引の減益(△87億円)。
- 電力・インフラサービス: 電力卸売・小売事業の減益(△87億円)。
- 増益要因:
- 食料・アグリ: 米国肥料卸売事業および国内鶏肉事業の増益(+112億円)。
- 減益要因:
- 営業利益: 売上総利益の減少に加え、販売費及び一般管理費が増加したことにより、前年同期比187億円(12.9%)減の1,264億円となりました。
- 親会社の所有者に帰属する中間利益: 前年同期比674億円(28.3%)増の3,055億円。大幅な増益の主な要因は以下の通りです。
- 最大の増益要因: 金融・リース・不動産セグメントにおいて、第一生命ホールディングスとの国内不動産事業統合に伴う評価益765億円(税後)を計上。
- その他の増益要因: 次世代事業開発セグメントにおける電子部品関連事業取得に伴う負ののれん発生益を計上。
- 減益要因: エネルギー・化学品セグメントにおける石油・ガス開発事業の有形固定資産評価損。また、前年同期に計上したみずほリース株式追加取得に伴う負ののれん発生益の反動減。
2. セグメント別業績分析
当中間期よりオペレーティング・セグメントの再編が行われています。以下の表および分析は、再編後の区分に基づき、前年同期の数値を組み替えて比較したものです。
オペレーティング・セグメント別業績(親会社の所有者に帰属する中間利益)
| セグメント | 2026年3月期中間期 (億円) | 2025年3月期中間期 (億円) | 増減 (億円) | 主な増減内容 |
| ライフスタイル | 111 | 147 | △35 | ムシパルプ事業の減益(市況悪化、販売数量減少) |
| 食料・アグリ | 413 | 349 | +64 | 国内鶏肉事業、米国肥料卸売事業の増益 |
| 金属 | 522 | 596 | △74 | 豪州原料炭・鉄鉱石事業の減益(商品価格下落) |
| エネルギー・化学品 | 42 | 232 | △189 | 石油・ガス開発事業の評価損、石油化学品取引の減益 |
| 電力・インフラサービス | 368 | 360 | +8 | – |
| 金融・リース・不動産 | 1,257 | 407 | +851 | 国内不動産事業統合の評価益、北米貨車リース売却益 |
| エアロスペース・モビリティ | 240 | 260 | △20 | 船舶保有運航事業の減益 |
| 情報ソリューション | 27 | 5 | +22 | IT・デジタルソリューション事業の増益 |
| 次世代事業開発 | 141 | 14 | +127 | 電子部品関連事業取得に伴う負ののれん発生益 |
| 次世代コーポレートディベロップメント | △6 | △7 | +1 | – |
| その他 | △61 | 19 | △81 | – |
| 全社合計 | 3,055 | 2,381 | +674 | – |
主要セグメントの動向
- 金融・リース・不動産: 国内不動産事業統合に伴う一過性の評価益が寄与し、利益が大幅に増加(+851億円)。北米のモビリティ事業や航空機リース事業も増益に貢献しました。
- エネルギー・化学品: 石油・ガス開発事業における有形固定資産の評価損が響き、セグメント利益が大幅に減少(△189億円)。
- 金属: 石炭や鉄鉱石といった商品価格の下落が、豪州の資源事業の収益を圧迫し、減益(△74億円)となりました。
- 食料・アグリ: 国内の鶏肉事業や米国の肥料卸売事業が好調で、増益(+64億円)を確保しました。
- 次世代事業開発: M&Aに伴う負ののれん発生益により、利益が大幅に増加(+127億円)しました。
3. 財政状態とキャッシュ・フロー
財政状態
当中間期末の総資産は9兆2,874億円、親会社の所有者に帰属する持分合計は3兆8,766億円となり、自己資本は着実に積み上がっています。ネットDEレシオは前年度末から0.01ポイント改善し、0.53倍となりました。
| 項目 | 2026年3月期中間期末 | 2025年3月期末 | 増減 |
| 総資産 | 9兆2,874億円 | 9兆2,020億円 | +854億円 |
| ネット有利子負債 | 2兆622億円 | 1兆9,655億円 | +967億円 |
| 親会社の所有者に帰属する持分合計 | 3兆8,766億円 | 3兆6,292億円 | +2,473億円 |
| ネットDEレシオ | 0.53倍 | 0.54倍 | △0.01ポイント |
- 総資産: 棚卸資産は減少したものの、持分法で会計処理される投資が増加したことなどにより、前年度末比で854億円増加。
- 親会社の所有者に帰属する持分: 中間利益の計上による利益剰余金の増加や、為替変動に伴う在外営業活動体の換算差額の増加により、2,473億円増加。
キャッシュ・フロー
フリーキャッシュ・フローは、投資活動による支出が営業活動による収入をわずかに上回り、24億円の支出となりました。
- 営業活動によるキャッシュ・フロー: 2,114億円の収入。
- 投資活動によるキャッシュ・フロー: △2,138億円の支出。海外事業における資本的支出や子会社株式の取得などが主な要因。
- 財務活動によるキャッシュ・フロー: 122億円の収入。配当金の支払いや327億円の自己株式取得があった一方、社債および借入金による資金調達を行いました。
4. 通期業績予想と株主還元
連結業績予想
2026年3月期の通期連結業績予想については、2025年5月2日に公表した数値を据え置いています。
- 親会社の所有者に帰属する当期利益: 5,100億円(前期比1.4%増)
- 進捗率: 中間期終了時点で、通期予想に対する進捗率は**59.9%**に達しています。
配当
配当予想にも変更はなく、安定した株主還元を継続する方針です。
- 中間配当金: 1株当たり 50.00円
- 期末配当金(予想): 1株当たり 50.00円
- 年間配当金(予想): 1株当たり 100.00円




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