エグゼクティブサマリー
2026年3月期第2四半期(2025年4月1日~9月30日)において、伊藤忠商事は収益が前年同期比0.6%減の7兆2,492億円、営業利益が同3.4%減の3,541億円と減収減益(営業利益ベース)となった。これは金属や住生活セグメントの不振が主な要因である。
しかし、C.P. Pokphand等の株式売却に伴う有価証券損益が1,311億円の大幅な増益となったことが寄与し、税引前中間利益は同9.9%増の6,620億円、当社株主に帰属する中間純利益は同14.1%増の5,003億円と、最終利益ベースでは大幅な増益を達成した。
財務面では、純利益の着実な積み上げにより株主資本が増加し、株主資本比率は38.9%(前期末比0.9ポイント上昇)、NET DERは0.47倍(同0.04改善)と財務健全性が向上した。また、堅調な営業取引収入に支えられ、フリー・キャッシュ・フローは5,283億円と前年同期の4,161億円を上回った。
株主還元策として、1株当たり年間配当金を前期の200円から210円(株式分割考慮前)へ増配する予想を発表。さらに、投資単位当たりの金額を引き下げ、株式の流動性向上と投資家層の拡大を図ることを目的に、2026年1月1日を効力発生日とする1株を5株に分割する株式分割を決議した。
2026年3月期の通期業績予想については、当社株主に帰属する当期純利益9,000億円という従来の見通しを据え置いている。
1. 連結経営成績の概要 (2025年4月1日~9月30日)
1.1. 主要財務指標
当中間連結会計期間の経営成績は、営業利益が減少したものの、有価証券売却益等により最終利益は大幅な増益となった。
| 項目 | 2026年3月期 中間期 | 2025年3月期 中間期 | 増減率 |
| 収益 | 7,249,159 百万円 | 7,291,307 百万円 | △0.6% |
| 営業利益 | 354,140 百万円 | 366,744 百万円 | △3.4% |
| 税引前中間利益 | 661,959 百万円 | 602,266 百万円 | +9.9% |
| 当社株主に帰属する中間純利益 | 500,280 百万円 | 438,442 百万円 | +14.1% |
| 基本的1株当たり中間純利益 | 354.18 円 | 304.99 円 | – |
(注) 営業利益は、日本の会計慣行に基づき「売上総利益」「販売費及び一般管理費」「貸倒損失」の合計で算出。
1.2. 業績分析
総括 収益は金属、エネルギー・化学品、住生活セグメントの減少により微減。営業利益は金属、住生活セグメントの不振に加え、デサントの連結子会社化や人件費増加に伴う販管費の増加が影響し減益となった。一方で、C.P. Pokphand、PROVENCE HUILES、ジャムコの一部売却による有価証券損益が大幅に増加(前年同期比+1,311億円)したことが、税引前利益および最終利益を大きく押し上げた。
損益の主な増減理由
| 項目 | 増減額 (億円) | 主な要因 |
| 売上総利益 | +431 | (+)繊維、情報・金融、第8 (△)金属 |
| 販売費及び一般管理費 | △538 | (△)デサントの連結子会社化、人件費の増加 |
| 有価証券損益 | +1,311 | (+)C.P. Pokphand、PROVENCE HUILES、ジャムコの一部売却 |
| 持分法による投資損益 | △316 | (△)第8 (+)機械 |
| 当社株主に帰属する中間純利益 | +618 | 上記要因による |
1.3. 事業セグメント別業績
セグメント別では、機械、食料セグメントが利益を伸ばした一方、金属、第8セグメントが大幅な減益となった。
セグメント別 当社株主に帰属する中間純利益 (単位:百万円)
| セグメント | 2026年3月期 中間期 | 2025年3月期 中間期 | 増減額 |
| 繊維 | 24,199 | 12,659 | 11,540 |
| 機械 | 76,915 | 63,296 | 13,619 |
| 金属 | 63,548 | 100,438 | △36,890 |
| エネルギー・化学品 | 37,685 | 32,991 | 4,694 |
| 食料 | 53,941 | 40,211 | 13,730 |
| 住生活 | 19,044 | 31,188 | △12,144 |
| 情報・金融 | 40,020 | 37,827 | 2,193 |
| 第8 | 32,405 | 54,185 | △21,780 |
| その他及び修正消去 | 152,523 | 65,647 | 86,876 |
| 連結合計 | 500,280 | 438,442 | 61,838 |
セグメント別 営業利益 (単位:百万円)
| セグメント | 2026年3月期 中間期 | 2025年3月期 中間期 | 増減額 |
| 繊維 | 14,621 | 11,015 | 3,606 |
| 機械 | 41,933 | 43,815 | △1,882 |
| 金属 | 58,362 | 84,618 | △26,256 |
| エネルギー・化学品 | 53,655 | 52,937 | 718 |
| 食料 | 65,574 | 61,976 | 3,598 |
| 住生活 | 33,512 | 43,220 | △9,708 |
| 情報・金融 | 44,803 | 42,026 | 2,777 |
| 第8 | 53,041 | 43,398 | 9,643 |
| その他及び修正消去 | △11,361 | △16,261 | 4,900 |
| 連結合計 | 354,140 | 366,744 | △12,604 |
2. 連結財政状態とキャッシュ・フロー
2.1. 財政状態 (2025年9月末時点)
純利益の積上げにより株主資本が増加し、財務の健全性は向上している。
| 項目 | 2025年9月末 | 2025年3月末 | 増減額 |
| 総資産 | 15,585,953 百万円 | 15,134,264 百万円 | +451,689 百万円 |
| 負債合計 | 8,958,224 百万円 | 8,843,552 百万円 | +114,672 百万円 |
| 資本合計 | 6,627,729 百万円 | 6,290,712 百万円 | +337,017 百万円 |
| 株主資本 | 6,060,920 百万円 | 5,755,072 百万円 | +305,848 百万円 |
| 株主資本比率 | 38.9% | 38.0% | 0.9 pt 上昇 |
| NET DER | 0.47倍 | 0.51倍 | 0.04 改善 |
- 総資産増加の主な要因:
- 取引増加による棚卸資産 (+827億円) 及び営業債権 (+641億円) の増加
- カワサキモータースの取得
- (減少要因) C.P. Pokphandの売却
2.2. キャッシュ・フローの状況
営業活動によるキャッシュ・フローは堅調に推移し、フリー・キャッシュ・フローは前年同期を上回った。
| 項目 | 2026年3月期 中間期 | 2025年3月期 中間期 |
| 営業活動によるCF | 609,245 百万円 | 578,586 百万円 |
| 投資活動によるCF | △80,924 百万円 | △162,467 百万円 |
| フリー・キャッシュ・フロー | 528,321 百万円 | 416,119 百万円 |
| 財務活動によるCF | △498,596 百万円 | △411,985 百万円 |
| 現金及び現金同等物 期末残高 | 583,542 百万円 | 597,715 百万円 |
- 営業CF (+6,092億円): 第8、エネルギー・化学品、食料での堅調な営業取引収入、持分法投資からの配当金受取などが主な要因。
- 投資CF (△809億円): 機械及び情報・金融での持分法投資の取得、各セグメントでの固定資産取得がマイナス要因。C.P. Pokphandの売却がプラス要因。
- 財務CF (△4,986億円): 配当金の支払、自己株式の取得、リース負債・社債及び借入金の返済が主な要因。
3. 株主還元と株式関連情報
3.1. 配当方針
2026年3月期の配当は、前期から増配となる見込みである。
| 項目 | 2025年3月期 (実績) | 2026年3月期 (予想) |
| 中間配当 | 100.00円 | 100.00円 (分割前) |
| 期末配当 | 100.00円 | 22.00円 (分割後) |
| 年間合計 | 200.00円 | 210.00円 (分割考慮前換算) |
(注) 2026年3月期の期末配当予想は1対5の株式分割後の金額。分割を考慮しない場合の年間配当金は210.00円となる。
3.2. 株式分割
投資家層の拡大と株式の流動性向上を目的として、1株を5株とする株式分割が決定された。
- 目的: 投資単位当たりの金額を引き下げ、より投資しやすい環境を整えると共に、株式の流動性向上と投資家層の拡大を図る。
- 分割割合: 普通株式1株につき5株
- 基準日: 2025年12月31日
- 効力発生日: 2026年1月1日
- 分割後の発行済株式総数: 7,924,447,520株
- 分割後の発行可能株式総数: 15,000,000,000株 (定款変更)
3.3. 自己株式取得
当中間連結会計期間中に、取締役会決議に基づき12,593,800株の自己株式を取得した。
4. 通期業績予想と外部環境
4.1. 2026年3月期 通期業績予想
通期の業績予想は、前回公表値から修正されていない。
| 項目 | 2026年3月期 (通期予想) | 対前期増減率 |
| 当社株主に帰属する当期純利益 | 900,000 百万円 | +2.2% |
| 基本的1株当たり当期純利益 | 127.95 円 (分割後) | – |
(注) 1株当たり当期純利益は株式分割が行われたと仮定して算出。分割考慮前では639.74円となる。
4.2. 外部経済環境認識
当中間期の世界経済は、米国の輸入関税強化の影響が広がる中でも総じて底堅く推移した。
- 米国: 関税強化で企業活動が鈍化したが、株価上昇により個人消費は堅調。
- 欧州: 対米輸出は減少したが、物価動向の落ち着きを背景に個人消費は底堅い。
- 中国: 対米輸出の大幅減を他地域向けで補ったものの、不動産市場の低迷や経済対策効果の一巡により内需が伸悩んだ。
- 日本: 対米輸出が大幅に減少したが、物価上昇圧力の鈍化によって個人消費が持ち直した。




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