エグゼクティブサマリー
2026年3月期第2四半期(中間期)連結決算は、増収増益を達成しました。親会社の所有者に帰属する中間利益は、前年同期比18.6%増の3,012億円となり、好調な業績を示しています。
この増益は主に、自動車セグメントにおける米国タイヤ販売事業の売却益、都市総合開発セグメントでの不動産大口案件の引渡し、そしてメディア・デジタルセグメントにおけるSCSKによるネットワンシステムズのグループ化といった、一過性の利益と事業ポートフォリオ強化の両面が牽引しました。
一方で、市況の変動が業績に与える影響も顕著であり、資源セグメントは豪州石炭事業の価格下落により大幅な減益となりました。また、エネルギートランスフォーメーションセグメントも、前年同期の資産売却益の反動により減益となっています。
財務面では、コアビジネスが着実にキャッシュを創出し、ネット有利子負債は減少し、ネットDERは0.55倍に改善するなど、財務基盤の健全性が向上しています。株主還元については、「中期経営計画2026」に基づき、1株当たり年間配当金を前期の130円から140円へ増配する予想を維持するとともに、800億円を上限とする自己株式取得を着実に進めています。
通期の連結業績予想は、親会社の所有者に帰属する当期利益5,700億円を据え置いています。
1. 連結経営成績の概要
1.1. 全体業績
2026年3月期第2四半期(中間期)の連結経営成績は、前年同期と比較して増収増益となりました。特に、税引前利益以降の各利益項目で二桁の増益を達成しています。
| 項目 | 2026年3月期中間期 (百万円) | 2025年3月期中間期 (百万円) | 増減率 (%) |
| 収益 | 3,537,187 | 3,518,480 | +0.5% |
| 税引前利益 | 372,401 | 329,739 | +12.9% |
| 中間利益 | 331,266 | 273,918 | +20.9% |
| 親会社の所有者に帰属する中間利益 | 301,235 | 253,963 | +18.6% |
| 基本的1株当たり中間利益 | 249.11円 | 209.33円 | – |
1.2. 主要な増減要因
親会社の所有者に帰属する中間利益は、前年同期比で473億円増加しました。主な増減要因は以下の通りです。
- 増益要因:
- 持分法による投資損益 (+262億円): 米国タイヤ販売事業におけるマイダス社の売却に伴う利益増が大きく貢献しました。
- 固定資産損益 (+147億円): 不動産事業における大口案件の引渡しが寄与しました。
- 売上総利益 (+228億円): SCSKにおけるネットワンシステムズのグループ化による利益増が主な要因です。
- 有価証券損益 (+96億円):
- 減益(費用増)要因:
- 販売費及び一般管理費 (△326億円): SCSKにおけるネットワンシステムズのグループ化に伴う費用増が影響しました。
2. セグメント別業績分析
2.1. セグメント別 親会社中間利益
セグメント別では、自動車、都市総合開発、メディア・デジタルの3セグメントが大幅な増益を達成し、全体の利益成長を牽引しました。一方で、資源セグメントは市況悪化により大幅な減益となっています。
| セグメント | 2026年3月期中間期 (億円) | 2025年3月期中間期 (億円) | 増減額 (億円) |
| 自動車 | 534 | 234 | +300 |
| 都市総合開発 | 441 | 205 | +236 |
| メディア・デジタル | 216 | 82 | +134 |
| 輸送機・建機 | 403 | 388 | +15 |
| 鉄鋼 | 341 | 352 | △11 |
| ライフスタイル | 23 | 26 | △3 |
| 化学品・エレクトロニクス・農業 | 148 | 148 | 0 |
| エネルギートランスフォーメーション | 481 | 589 | △108 |
| 資源 | 316 | 504 | △188 |
| 計 | 2,904 | 2,528 | +375 |
| 消去又は全社 | 109 | 11 | +97 |
| 全社計 | 3,012 | 2,540 | +473 |
2.2. 主要セグメントの動向
- 大幅増益セグメント:
- 自動車 (+300億円): 米国タイヤ販売事業におけるマイダス社売却益およびSML Isuzu社売却益が利益を大きく押し上げました。ただし、事業の核である自動車流通販売は、主力市場における競争激化により減益となっています。
- 都市総合開発 (+236億円): 不動産事業における大口案件の引渡しが主な増益要因です。
- メディア・デジタル (+134億円): SCSKによるネットワンシステムズのグループ化による増益に加え、アルゴグラフィックス株式の売却益が貢献しました。また、海外通信事業ではエチオピア通貨下落に伴う為替評価損が減少しました。
- 大幅減益セグメント:
- 資源 (△188億円): 豪州石炭事業が価格下落および原料炭の販売数量減少により減益となったほか、南アフリカ鉄鉱石事業も価格下落の影響を受けました。一方で、銅事業は価格上昇により増益となりました。
- エネルギートランスフォーメーション (△108億円): 海外発電事業において、前年同期に計上した資産売却益などの反動減が主な要因です。
- その他の注目セグメント:
- 鉄鋼 (△11億円): 北米における油価下落による鋼管の需要減が影響しましたが、新たに洋上風力発電用の基礎構造物(モノパイル)製造事業が利益貢献を開始しました。
- 輸送機・建機 (+15億円): リース事業が堅調に推移し、船舶事業も売船により増益となりましたが、建設機械事業は建設需要の軟調が継続し減益となりました。
3. 連結財政状態とキャッシュ・フロー
3.1. 財政状態
当中間連結会計期間末の資産合計は11兆9,766億円となり、前期末から3,454億円増加しました。株主資本は当期利益の計上などにより2,357億円増加し、親会社所有者帰属持分比率は40.8%に上昇しました。ネットDERは0.55倍に改善し、財務の健全性が高まっています。
| 項目 | 2025年9月30日 (億円) | 2025年3月31日 (億円) | 増減額 (億円) |
| 資産合計 | 119,766 | 116,312 | +3,454 |
| 株主資本 | 48,842 | 46,485 | +2,357 |
| ネット有利子負債 | 26,669 | 26,725 | △56 |
| ネットDER | 0.55倍 | 0.57倍 | △0.03pt |
3.2. キャッシュ・フロー
コアビジネスが着実にキャッシュを創出し、営業活動によるキャッシュ・フローは2,622億円のプラスとなりました。投資活動では、不動産やヘルスケア事業への出資があった一方、不動産や政策保有株式の売却といった資産入替を進めました。
| 項目 | 2026年3月期中間期 (億円) | 2025年3月期中間期 (億円) |
| 営業活動によるキャッシュ・フロー | 2,622 | 1,877 |
| 投資活動によるキャッシュ・フロー | △214 | △747 |
| フリーキャッシュ・フロー | 2,408 | 1,130 |
| 財務活動によるキャッシュ・フロー | △2,093 | △960 |
| 現金及び現金同等物の期末残高 | 6,008 | 5,706 |
- 投資活動の概要:
- 投資: 国内外不動産の取得、米国ヘルスケア事業ActivStyle社への出資
- 資産入替: 国内外不動産の売却、ティーガイア株式の売却、SCSKによるアルゴグラフィックス株式の売却、政策保有株式売却
- 財務活動の概要:
- 配当金の支払、自己株式の取得
- SCSKによるネットワンシステムズ株式の取得
4. 通期業績予想と株主還元
4.1. 通期業績予想
2026年3月期の連結業績予想については、足元の進捗を踏まえ、2025年5月1日に公表した通期予想を据え置いています。
| 項目 | 通期予想 (百万円) | 対前期増減率 (%) |
| 親会社の所有者に帰属する当期利益 | 570,000 | +1.4% |
| 基本的1株当たり当期利益 | 471.75円 | – |
4.2. 株主還元方針
「中期経営計画2026」で掲げた方針に基づき、積極的な株主還元を継続しています。
- 基本方針:
- 総還元性向を40%以上とする。
- 累進配当(前期実績に対し配当維持または増配)により、配当の安定性向上と利益成長に応じた増配を目指す。
- 当期の配当:
- 年間配当金予想: 1株当たり140円(前期実績130円)
- 中間配当金: 1株当たり70円(前期実績65円)
- 自己株式取得:
- 取得枠: 800億円を上限(取得期間:2025年5月2日~2026年3月31日)
- 取得実績: 2025年9月30日までの買付け金額は241億円となりました。




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