【2025年度2Q】8031 三井物産

決算速報

エグゼクティブサマリー

2026年3月期第2四半期(中間期)の連結決算は、収益は前年同期比で減少したものの、親会社の所有者に帰属する中間利益は4,237億円(前年同期比2.9%増)と増益を確保した。この結果を踏まえ、2026年3月期の通期連結業績予想は、期首予想から500億円増額の8,200億円に上方修正された。

主要なポイント:

  • 増益の達成と通期予想の上方修正: 第2四半期の純利益は、エネルギーセグメントにおけるLNGプロジェクトからの配当金増加などが寄与し、4,237億円となった。通期純利益予想は、機械・インフラ、金属資源、エネルギーセグメントの好調を背景に8,200億円へと引き上げられた。
  • セグメント別の動向: エネルギーセグメントがLNG関連の増益により好調を維持した一方で、金属資源セグメントは鉄鉱石・原料炭価格の下落により減益。機械・インフラセグメントは、前年同期の大型資産売却益の反動や再生可能エネルギー事業(Mainstream)における減損損失計上が響き、大幅な減益となった。
  • 強固な財務基盤: 親会社所有者帰属持分比率は46.1%に上昇し、ネットDERは0.42倍へと改善。強固な財務基盤を維持している。基礎営業キャッシュ・フローは4,485億円と高水準を確保した。
  • 積極的な株主還元: 中期経営計画で掲げる累進配当方針に基づき、年間配当予想を前期比15円増の1株当たり115円に設定。さらに、最大2,000億円規模の自己株式取得を新たに決定し、株主還元の強化を鮮明にしている。
  • 重要事項: 機械・インフラセグメントにおいて、再生可能エネルギー事業「Mainstream」に関連し、合計280.5億円の減損損失を計上。また、ロシアのサハリンⅡ事業は依然として不確実性の高い状況が継続している。

1. 2026年3月期 第2四半期 連結経営成績

1.1. 業績概要

2026年3月期第2四半期(2025年4月1日~9月30日)の連結経営成績は、収益が前年同期比で減少したものの、税引前利益および中間利益は増益となった。

勘定科目2026年3月期 中間期 (百万円)2025年3月期 中間期 (百万円)増減 (百万円)増減率 (%)
収益6,759,1157,331,817△572,702△7.8%
売上総利益618,727612,421+6,306+1.0%
税引前利益546,636534,249+12,387+2.3%
中間利益436,876420,747+16,129+3.8%
親会社の所有者に帰属する中間利益423,733411,787+11,946+2.9%
中間包括利益合計額633,729238,450+395,279+165.8%
基本的1株当たり中間利益147.41円138.61円+8.80円

注: 2024年7月1日付で1株につき2株の株式分割を実施。1株当たり中間利益は分割を考慮して算定されている。

1.2. 主要な増減要因

  • 収益: エネルギー、金属資源、化学品セグメントを中心に減少し、前年同期比で5,727億円の減収となった。
  • 売上総利益: エネルギーセグメントでのLNG物流増益などが、金属資源セグメントでの鉄鉱石・原料炭価格下落による減益を相殺し、微増益を確保した。
  • 有価証券損益: 前年同期に機械・インフラセグメントで計上したPaiton事業やVLI株式の売却益の反動により、703億円減少した。
  • 受取配当金: エネルギーセグメントにおける主要LNGプロジェクト4案件からの配当金が大幅に増加(+557億円)したことが主因となり、全体で498億円増加した。
  • 中間利益: 上記要因の結果、親会社の所有者に帰属する中間利益は119億円の増益となった。

2. セグメント別業績分析

セグメント別の親会社の所有者に帰属する中間利益は以下の通り。

セグメント2026年3月期 中間期 (億円)2025年3月期 中間期 (億円)増減 (億円)主な増減要因
金属資源1,1431,615△472・豪州鉄鉱石事業(鉄鉱石価格下落)
・Mitsui Resources(原料炭価格下落)
・Japan Collahuasi Resources(数量減)
エネルギー1,029653+376・LNGプロジェクト4案件からの受取配当金増 (+557億円)
・Mitsui E&P USA(ガス価格上昇)
・Arctic LNG 2プロジェクト関連損失
機械・インフラ1,0201,482△462・前年同期Paiton事業/VLI株式売却益の反動
・Mainstream Renewable Power減損損失 (-155億円)
・融資評価損 (-56億円)
・持分法損失 (-70億円)
・Firefly AerospaceのIPOに伴う公正価値評価益 (+189億円)
化学品435221+214・前年同期の固定資産減損損失の反動 (+132億円)
・海外事業に関わる引当金取崩益 (+78億円)
・ITC Antwerpの区分異動に伴う公正価値評価益 (+81億円)
鉄鋼製品11373+40・小口集積による増益など
生活産業208200+8・三井物産流通グループ固定資産売却益 (+88億円)
・WILSEY FOODS(Ventura Foods一部事業売却益)(+66億円)
次世代・機能推進253180+73・本店事業部トレーディング増益(為替要因)
・小口集積による増益
合計4,2004,424△224(各セグメント利益の単純合計)

3. 財政状態とキャッシュ・フロー

3.1. 財政状態(2025年9月末時点)

総資産は前期末比5,822億円増の17兆3,937億円となった。自己資本の充実により、財務の健全性はさらに向上した。

項目2025年9月末 (億円)2025年3月末 (億円)増減 (億円)
総資産173,937168,115+5,822
流動資産56,98156,869+111
非流動資産116,956111,246+5,710
負債合計91,38690,489+897
資本合計82,55177,626+4,925
親会社の所有者に帰属する持分80,26275,466+4,795
親会社所有者帰属持分比率46.1%44.9%+1.2 pt
ネット有利子負債33,40933,301+108
ネットDER0.42倍0.44倍△0.02
  • 非流動資産の増加要因: 持分法適用会社に対する投資の増加(+1,351億円)、その他の投資の増加(+2,058億円、主にLNG事業等の公正価値評価益)、有形固定資産の増加(+1,668億円)が主な要因。
  • 資本の増加要因: 利益剰余金の増加(+2,548億円)に加え、FVTOCI金融資産の評価益や豪ドル高による外貨換算調整勘定の増加(+961億円)が寄与した。

3.2. キャッシュ・フローの状況

基礎営業キャッシュ・フローは前年同期から減少したものの、4,485億円と高水準を維持した。

項目当中間期 (億円)前年同期 (億円)増減 (億円)
基礎営業キャッシュ・フロー4,4855,381△896
営業活動によるCF4,2875,958△1,670
投資活動によるCF△2,411△412△1,999
フリー・キャッシュ・フロー1,8765,546△3,670
財務活動によるCF△2,244△5,718+3,474
  • 基礎営業キャッシュ・フロー: 主に持分法適用会社からの配当金を含む受取配当金の減少(977億円減)により、前年同期比で減少した。
  • 投資活動によるキャッシュ・フロー: 石油・ガス生産事業(△508億円)、豪州鉄鉱石事業(△338億円)、発電事業(△263億円)への投資を実行。一方、IHI株式や三井物産流通グループの固定資産売却などで資金を回収した。
  • 財務活動によるキャッシュ・フロー: 配当金支払(1,437億円)が主な支出。前年同期は大規模な自己株式取得(約2,000億円)があったため、支出額は大幅に減少した。

4. 2026年3月期 通期業績予想と経営方針

4.1. 通期業績予想の上方修正

中間期の好調な業績を踏まえ、2026年3月期の通期連結業績予想を上方修正した。

項目11月公表予想 (億円)5月公表予想 (億円)増減 (億円)
当期利益(親会社の所有者に帰属)8,2007,700+500
基礎営業キャッシュ・フロー9,0008,200+800

セグメント別の当期利益予想は以下の通り。機械・インフラ、金属資源、エネルギーセグメントで増額修正が行われた。

セグメント11月公表予想 (億円)5月公表予想 (億円)増減 (億円)
金属資源2,2002,000+200
エネルギー1,6001,400+200
機械・インフラ2,1501,900+250
化学品800850△50
鉄鋼製品150150
生活産業650700△50
次世代・機能推進650650
連結合計8,2007,700+500

4.2. 業績予想の前提条件

通期業績予想の主な前提条件は以下の通り。

項目通期予想 (11月公表)期首予想 (5月公表)
期中平均米ドル為替レート145.54 円140.00 円
連結決算反映原油価格78 USD/bbl75 USD/bbl
銅価格 (LME cash)9,639 USD/トン9,100 USD/トン
期中平均豪ドル為替レート94.85 円90.00 円

4.3. 利益配分と株主還元

  • 累進配当: 中期経営計画期間中(2024年3月期~2026年3月期)において、配当維持または増配を行う累進配当を導入しており、計画期間後も継続する方針。
  • 年間配当予想: 2026年3月期の年間配当は、前期比15円増の1株当たり115円(中間55円、期末60円)を予定。
  • 自己株式取得: 2025年11月6日から2026年3月19日を取得期間とする、最大2,000億円の自己株式取得を公表。取得した全株式は2026年3月30日に消却予定。
  • 中期経営計画の還元方針: 3年間累計の基礎営業キャッシュ・フローに対する株主還元割合は、目安の37%程度を大幅に上回り、54%を超える見通し。

5. 重要注記事項

5.1. Mainstream Renewable Power事業の減損

機械・インフラセグメントの再生可能エネルギー事業「Mainstream」において、開発計画の絞り込みや洋上風力発電事業開発の取組停止を理由に、合計280.5億円の損失を認識した。内訳は以下の通り。

  • 有価証券損益: 持分法適用会社に対する投資減損損失 155.15億円
  • 持分法による投資損益: 固定資産減損等の損失 69.55億円
  • 雑損益: 持分法適用会社に対する融資評価損 55.80億円

5.2. ロシアLNG事業への影響(サハリンⅡ)

サハリンⅡ事業は、依然として高い地政学的リスクに晒されており、不確実性の高い状況が継続している。同事業への投資(連結子会社MIT SEL Investmentが保有)の公正価値は、確率加重平均を用いた期待現在価値技法により測定されている。2025年9月末時点の帳簿価額(「その他の投資」)は477.21億円。

5.3. モザンビークLNGプロジェクト

モザンビーク北部の治安状況悪化により、プロジェクトは不可抗力(フォース・マジュール)宣言下にあるが、治安回復には進捗が見られ、工事の早期再開に向けた取り組みが続いている。現時点で連結業績への重大な影響はないと想定されている。

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